人と自然の共生の智恵をつなぐ

対馬里山繋営塾 TSUSHIMA SATOYAMA KEIEIJUKU


 
   
   
  農業の取り組み
Agriculture
 
     
 

地区に伝わる稲作伝来伝説より
  弥生時代初期から水稲栽培がおこなわれていた志多留地区。一説には、「稲作伝来の地」とも言われています。
 山が多く平地の少ない対馬では珍しく湿地帯であったこの地では、古くからお米作りが盛んに行われてきました。「水が滴る(したたる)」からその名がついたと言われるほど、豊かな水資源を持つ志多留。灌漑技術が無かった時代、自然の地形でお米作りができていた、貴重な場所でした。

 
 →志多留の(かつての)水田地帯
 水が途切れることのない昔からの湿田です


 周辺の山々に降った雨が、沢を伝って谷へと運ばれ、水田として利用されながらゆっくりと海へと流れてゆきます。志多留の田んぼでは、そんな山から海へと途切れることなく続く水の流れ、そして、その流れの中に息づく多くの生きものたちのつながりを感じることができます。農業の近代化によって、最近では珍しくなってしまった、農村の原風景です。日本で初めてかもしれない水田で、そんな原風景が残っているという奇跡を感じずにはいられません。
 しかし現在、水田は急速に姿を消し、耕作放棄地が広がっています。このまま何もしなければ、近い将来、この地で二千年続いた稲作の歴史は途絶えてしまうでしょう。

 もう一度この地を田んぼの姿に戻したい―
 そんな思いから私たちは動き始めました。



 農業の近代化によって、機械化が進み、農業の効率は飛躍的に向上しました。
しかし、それによって多くの「田んぼの生きもの」が絶滅の危機に瀕しています。かつては日本中に普通に見られたウナギやメダカなどは、その代表です。田んぼを介して山から海へと生きものたちを行き来させていた「生きものたちのつながり」が、失われてしまったのです。

昔の田んぼは、水路と田んぼの高さが同じ。
水路にすむメダカやフナやドジョウは、春になって田んぼに水が入ると、温かくなった田んぼに入って産卵していました。土でできた水路には、ウナギもたくさん住んでいました。
  水が抜けず、冬でも田んぼには水がたまっている状態でした。
多くの水
たちが、 田んぼに飛来し、土の中の水草や雑草の種、ドジョウなどを食べていました。冬の貴重な水場には、カエルも産卵へとやってきました。
水路と田んぼに落差ができ、魚が田んぼにのぼることができなくなりました。   冬は田んぼを干せるようになり、水鳥の生息場所が減少しました。

「圃場整備事業」とは
●用水と排水を分離(パイプライン、開水路)

●暗渠排水(穴の開いた管を埋め込み、排水をよくする)

●客土(土を入れて、田んぼを高くする)

これによって田んぼの水はけを良くし、大型機械の導入を可能にしました。乾田化した田んぼでは、野菜や麦も作れるようになりました。


 志多留の田んぼでは、圃場整備が行われていません。農業の効率化は果たせませんでしたが、幸か不幸か、そのおかげで、そうした生きものたちのつながりが今でも保たれています。今となっては貴重となった、水田を営むことで生み出されてきた生きものたちの住処が、まだ残っているのです。人の営みと里山の生きものたちとの密接な関係を、伝えていける場でありたいと思っています。

 
生きものあふれる志多留の田んぼのヒミツ





 圃場整備がなされていない志多留の田んぼでは、トラクターやコンバインといった、大型の機械を用いた効率的な農業は、残念ながら不可能です。そういう田んぼでは「自然の仕組みや生きものの力を借りて農業をする」昔ながらの農法が力を発揮するのです。志多留では幸い、そのような昔ながらの農法がまだ継承されていました。
 農業の機械化や近代化は、確かに必要なことだと思います。しかし現代の農業は、化石燃料や化学肥料など、大量のエネルギーや資材を外から運んで来て投入することで成り立っています。持続可能な農業か、と問われると、疑問を感じてすまいます。
 長い目で見て効率的で持続的な農業は、やはり、その土地で生み出される資源やエネルギーをしっかりと活かすことができる農業だと思うのです。今の大量生産と巨大な流通システムの中では、こうした農業は非効率で競争力が無いかもしれません。しかし一方で、長い歴史の中で培われてきた生きものとの共生の智恵や技術を、どこかで残し繋いでゆくことも、必要なことではないかと思うのです。

無農薬・無化学肥料で栽培しています
田んぼの中で苗を育てます
田んぼの生きものの力を最大限に活かすため、農薬や化学肥料は使わずに栽培しています。除草剤を使わない代わりに、「中耕除草機」と呼ばれる手押し車を押して雑草の芽を抜き取ったり、深水で管理することで、雑草を生えにくくしたり、という工夫をしています。それでも生えてきてしまう雑草は、手で抜き取ります。 今は、ビニールハウスの中など、陸上で苗づくりをするのが一般的ですが、私たちは田んぼの中に苗床を作って苗づくりをしています。水の中で苗を育てることで、水の力で苗の病気を抑えることができます。そのため、一般的に育苗時に使われえる「箱施用剤」という農薬を使いません。

「はさかけ」という方法で天日乾燥します
冬でも田んぼに水を張ります(冬期湛水)
コンバインが普及した現在では、稲刈りとともに稲から籾を外し、機械で熱風を当てて乾燥させるのが一般的です。私たちの田んぼでは、コンバインが入らないので、稲を刈り取り、逆さにつるして天日で乾燥させています。この方法では、稲に残ったでんぷんが最後の最後まで籾に送られ、じっくり低温で乾燥されるため、おいしいお米になるといわれています。 志多留の田んぼは、暗渠と呼ばれる排水設備がありません。そのため、冬でも田んぼに水が張られています。水の中では、イトミミズたちが冬場もせっせと有機物を分解し、「とろとろ層」と呼ばれる栄養たっぷりな土を作ります。このとろとろ層が、雑草の種を沈めてくれたり、次の年の稲の肥料になったりします。冬鳥もたくさん田んぼに訪れます。




 稲作伝来伝説の残る志多留の田んぼ、里山の農村の原風景が残っている志多留の田んぼを、なんとか後世まで残していきたい。効率的な農業は出来ないかもしれない、けれど、歴史や知恵や技術を伝える場としての役目は、この田んぼにはあるはずだ。そういう思いで、水田の再生活動をしています。
「田んぼのオーナー制度」に参加してくださる方や、「島おこし実践塾」の熟成たちとともに、毎年少しずつ、耕作放棄地の復田作業を行っています。復田した場所では、翌年から水稲栽培を行い、最初4アール(約400平方メートル)ほどだった私たちの水田面積も、いまでは36アールほど、9倍ほどにも広がっています。



 大型機械の導入が難しい志多留の田んぼでは、効率化を図り大規模に栽培を行うことができません。そのような中で、栽培を続け、長年この地で培われてきた農法を繋ぎ伝えてゆくには、その趣旨に賛同してくれるサポーターの皆様の力が必要です。
 そこで私たちは、
「田んぼのオーナー制度」を始めました。志多留の水田再生と稲作の継承のために出資していただいた方に、お米をお届けしています。お米をお届する以外にも、ニュースレターを発行したり、田んぼの教室を開催したりなどの活動を通じて、オーナー様に、栽培技術や生きものとのつながりを伝える場を設けています。
                →田んぼの教室の様子
         
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 65歳以上の高齢者が6割を超える志多留地区。かつては一面に広がっていた田んぼや畑も、高齢化によってどんどん規模が小さくなり、耕作放棄地が広がっています。田畑を維持することで守られていたのは、食料を確保する場所としての機能だけではなく、生きものを育む里山の環境や、防災・減災の機能、水源涵養の機能などの、私たちの生活に無くてはならないものも含まれています。人口が減少し高齢化が進む中でも、田畑を維持していく手段として、「手間や体力をそれほど必要とせずに栽培できる作物」を積極的に導入していく必要があると考えました。そこで導入したのが唐辛子栽培です。地域の皆さんに協力を呼びかけ、栽培に携わってくれる人を集めました。

栽培に協力してくださる皆さんとともに、セルトレイに種まきをしました。ビニールハウスの中で発芽させ、苗づくりをします。 トウガラシの栽培圃場。まだまだ花は咲いていません。腰かけて収穫作業がしやすいように、畝間は広く作りました。

田んぼのオーナー制度に参加してくださっている方々が、収穫体験に訪れました。緑の畑に真っ赤な唐辛子。子どもたちも大喜びです。 トウガラシは房ごと収穫し、軒下にひと月ほど干して乾燥させます。収穫した唐辛子は、全量、熊本に出荷しました。

 
 
 
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ロゴ・イラスト:重原奈津子 構成:川口幹子